円清会会長挨拶
初代円清会会長(野口内科) 野口 晶教
本日ここに総合診療部円清会総会および記念講演会を迎えることができまして,まことにおめでとうございます。同門の皆様とともに心よりお慶び申し上げます。
  昨年11月29日に総合診療部の開部15年を経過したことを機に同門会が発足し,その名称を円清会といたしました。お世話になっている総合診療部の臨床および研究の発展進歩に寄与し,また同門の先生方相互の友好を深めることを目的に設けられた会であります。
  その際,私が総合診療部開部からの最古参OBとのことで会長の大役を仰せつかりました。学外に出てからは,長年ほとんど総合診療部の診療,研究活動に貢献できていませんでしたので,浅学非才を省みず大任ではありますがお引受けさせていただくことにいたしました。
この16年間に柏木征三郎教授および林純教授のご指導のもとに多くの医局員が育ち学内,学外を合わせ50名ほどの先生方が臨床や研究にとご活躍されております。
  九州大学病院ではHIV診療の中心的役割を担っていますが,院内感染対策等を統括し,学外の医療関係者に対して啓蒙指導する重要な部門になっています。またC型肝炎のインターフェロン治療の成績などは,今まで九大医学部のナンバー内科で別々に集めた成績をそれぞれ個々に発表していましたが,福岡市や北九州全体での成績を出すには十分な症例数を確保することが困難でした。こういう状況を打開するため総合診療部がまとめ役として,林教授のリーダーシップの元にそれぞれの教室の協力を得ることができ九州大学関連病院肝臓研究会(KULDS)が誕生しました。そしてその研究成果は早速,先日福岡市で開催されたDDWで大規模臨床成績として発表されました。
  研究面ではHBV,HCV,ATL,HIV,インフルエンザ等のウイルス感染症を中心としたものだけでなく,最近では動脈硬化,胃癌等の疫学的研究などにも展開し,臨床部門はもちろん,優れた研究業績が数多く発表され,その報告を見聞きし,同門の身として嬉しさとともに頼もしさを感じます。また新しい研究棟への移転も行われ,より快適な環境の元で一層の研究の充実発展が期待されるところです。
さて本年度より国立大学の独立行政法人化と臨床研修必修化が始まりました。臨床研修プログラム作りやマッチングなどその準備期間から臨床研修教育センター長として関わっておられる林教授のご苦労は大きかったものと思います。
  九州大学病院と関連病院の「たすきがけ」方式で今年度は実施されましたが,九州大学病院,関連病院ともに研修医の取扱い,指導などでマンパワーも含め,数多くの問題があり,あと数年は試行錯誤の状態が続きそうです。そもそもの設立意義は患者の病態全体をみることができ,プライマリーケアを実践できる医師を育成する点にあり,まさに「総合診療医」を社会は必要としているということです。当教室にも総合診療医の派遣を希望する医療機関が多くあるそうで,これから多くの同門の先生方の活躍の場が広がっていくのではないかと期待しています。
  総合診療部発足時からの,仕事は厳しいが,楽しく明るい雰囲気で研究できるよい伝統を生かし,これから益々臨床,研究の分野で発展していくことと確信いたしております。わが総合診療部が,世界的にも医学的発展のために貢献できる優れた人材,研究を育成するため,同門会として全面的に支援していく所存であります。
  今後,一層教室との連携を密にしてその実現に向かって進んでいきたいと思います。これからも引き続き会員の皆様方のご指導・ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。