留学便り その2
平成27年6月
九州大学病院総合診療科
池崎 裕昭

ボストン Tufts大学HNRCAに留学を開始して早9ヶ月が過ぎました。長い冬が終わり、短い春を越えて、ボストンも本格的に夏を迎えようとしています。

まず研究についてですが、Tufts大学HNRCA内の2つの研究室とBoston大学と学内・学外共同で進めています。アメリカでは日本と異なり、医学研究に医師以外のバックグラウンドを持つ研究者が多く携わっており、特にTufts大学HNRCAは栄養学研究所であるため、周囲に化学者・栄養学者・統計学者など様々な研究者がいます。また、最初から最後まで全てを自分自身が主となって研究を行うことが多い日本と比べると、アメリカでは完全分担性を取ることが多いようです。異なるバックグラウンドを持つ研究者と研究を分担することも多く、研究の全体像を共有することに苦労をすることもありますが、研究に携わる全員とディスカッションを行うことで新たな視点からの発見もあり、楽しみながら研究を行っています。

ボストンは北海道室蘭市と同程度の緯度になり、冬は雪がよく降るとは聞いていましたが今年の冬は別格で、観測史上最高となる108.6 inch(= 275 cm)の積雪量を記録しました。福岡育ちですので最初こそ街中での積雪に興奮していましたが、毎週のように襲ってくるBlizzardに途中から飽きてしまいました。今年は冬も長く、ようやく春らしくなったのは4月下旬でした。春めいてきた4月20日にはBoston Marathonが行われました。2年前の爆弾テロ事件以来の合言葉となった『Boston Strong』は普段から街中で目にしますが、4月に入ってからは特に目にするようになりました。今年はあいにくの雨模様でしたが各国のマラソン選手とともに多くの市民ランナーも参加していました。5km、10km、ハーフの大会もあるそうですので、来年は5kmくらいにエントリーしてみようと考えています。

ボストンにはHarvard大学、Boston大学、Tufts大学と3つのMedical Schoolがあるため日本から多くの研究者が留学されています。九州大学からも各診療科から合計10名以上の医師・歯科医師が留学中で、九州大学所属研究者のみのコミュニティとしてボストン馬出会が2年ほど前から発足しています。最大で10学年ほど卒業年数が違いますが、診療科・卒後年数の垣根を越えて定期的に情報交換を行っています。その他にも全国各地の大学から留学されている先生方とも交流があり、自身の人脈と知見を広げるよい機会に恵まれていると感じています。留学中の縁は帰国後も続くとよく聞きます。それは留学中に誰しもが経験する苦労を共有することで、初期研修を乗り越えた同期のような絆が生まれるからではないか、と思っています。

これからアメリカは長い長いvacationの季節に入ります。それと同時に、日本からはあまり多くありませんが、世界中から多くの学生がインターンに訪れる季節でもあります。医師として働き始めてからは難しいですが、医学生の皆さんには是非夏休みを利用して海外の病院でのインターンシップも経験することをお勧めします。