九州大学病院総合診療科は、1987年に総合診療部として設立され、1988年に初代柏木征三郎教授、2001年に林純教授が着任、運営され、今回2021年1月に私が着任致しました。林前教授が中心となって日本病院総合診療医学会を設立されたこともあり、当教室は、総合診療の草分け的な役割を果たしてきた教室でもあります。
総合診療医の大きな役割として、General practitioner/Family doctorとして地域のプライマリ・ケアを担う役割とHospitalist として病院診療を担っていく役割があるかと思います。複数の病気を持つ人の診療においては、それぞれの疾患の治療はもちろん重要ですが、各専門診療科と緊密に連携をとりながら、患者さんを全体的に把握する必要もあります。また病院診療においても原因不明の症状で、どこの病気かわからないような場面に遭遇することも少なくありません。これに加えて、職業感染予防対策、感染制御など、職員全体やそれぞれの診療科を支えていくような役割もあるのではないかと思っています。
日本専門医機構は、総合診療専門医の医師像に幅広い視野を求めています。その中での幅広い視野とは、予防から急性期、そして慢性期まで、単一疾患から複合する疾患まで、一人から集団に関することまで、平時から有事の感染症対策まで、そして個々人だけでなく地域を診る医師としての役割まで求められています。私たちは、2020年1月から新型コロナウイルス感染症という未曽有の感染症を経験してきています。この場面でもまさにこれらに合致するような医師像が求められているかと思います。
私はこれまで感染症診療を中心に働いて参りました。感染症診療、感染制御において培った経験を活かしながら、さらに総合診療という全人的医療に結び付けることができればと考えています。良質なプライマリ・ケアを提供でき、病院診療においてもかなめとなることができ、感染制御にも長けているような医師を育成できればと思います。