2011年 教授挨拶
平成23年4月
九州大学病院総合診療科
九州大学大学院 教授 林 純
 私ども九州大学病院総合診療科は、1987年に総合診療部として設立され、1988年には初代教授に柏木征三郎先生が就任され、2001年より私が責任者となっています。その後2009年には診療部から診療科として格上げされ、私としては総合診療というものが九州大学病院で認知されたものと安堵しています。総合診療あるいは総合診療医がどうあるべきかということについては多くの考えがあり、わが国ではコンセンサスが得られていないのが現状です。そのようなことから、2009年に日本総合診療医学会は解散し、ある程度完成された開業医師の集まりであるプライマリ・ケア学会および家庭医療学会と合併しました。私は若い医師はまだまだ先進医療を学び先端医療の研究を行うべきだとの思いから、開業医師中心の学会との合併には反対をしました。その後、医局の若い医師からの要求、また多くの大学病院の総合診療部/科の勧めもありましたので、真の総合診療医を育成するため、私どもが事務局となり、大学病院を中心として社団法人日本病院総合診療医学会を立ち上げました。2010年の2月5、6日には福岡の地で、第1回の学術集会を私どもが主宰し開催したところ、特別講演1題、教育講演/セミナー5題に合わせて、一般演題も30施設から72演題の報告があり、盛会のうちに終えることが出来ました。第2回は本年の2月4、5日に東北大学病院総合診療部主宰により仙台で開催され、一般演題も24施設から86演題と増加ました(その後、東北地方では大震災に見舞われ大変な状況になっていることは、皆様ご存じだと思います)。また、第3回目は本年の9月9,10日に東邦大学病院総合診療・急病科主宰により東京で開催される予定です。学会員数も毎月入会申し込みがあり、1年足らずで約200名となりました。学会誌を発行し、認定医制度も制定し、現在、発展段階の状態です。
  現在、医師が最も少ない専門診療科は?と言う質問に対しての答えは、総合診療科であることは論を俟ちません。何故かと言いますと、現在の80歳代の内科医の90%以上、70歳代の70%以上は総合診療医であると推測されますが、60歳代では40%以下、50歳代では20%以下、40歳代では10%以下と 減少しています。高齢化が進むわが国では総合診療医のニーズはますます高まっており、同時に地域の医療機関からもオファーがきています。し、また、この度の東日本大震災の医療援助につきましても、国の方からオールラウンドの総合診療医に依頼がきています。しかし、医局員の数が充分でないためその要求に充分には答えられないのが現状です。現在の所、私どもの医局からの後期専門医研修には福岡大学病院総合診療部、独立行政法人国立病院機構九州医療センター総合内科、公立学校共済組合九州中央病院、日本赤十字社福岡赤十字病院総合診療科、医療法人原三信病院総合診療科へ、特に高齢者医療や緩和医療を学びたい医師には特定医療法人原土井病院総合診療科へ、離島での地域医療を学びたい医師には玄州会光武内科・循環器科病院内科を選択してもらっています。総合診療医を目指す若い医師には、是非、九州大学病院総合診療科の門を叩いて欲しいものです。ただ、私ども総合診療科の考えは総合診療医を目指しながらもSubspecialtyも持つことを目指し、さらに研究も行いますので、大変ではありますが、充実した後期専門医研修となると思います。
  一般的に、総合診療医の概念としては、全人的医療が行える、初診外来で的確に患者を専門診療科に紹介できる、とされています。しかし、それだけでしょうか、全ての疾患に対応するものの、最終的には専門診療科に紹介するだけであれば、総合診療医のIdentityがあまりにも無いような気がします。やはり、いくつかの医学分野では専門医と同等の医学知識および医療技術を持たなければならないと思います。Subspecialtyを持った上でどのような患者さんにも対応し、全人的医療を行ない、予防医療も行なうのが「私の考える総合診療医」の概念です。以上のことから、予防医学の最前線と考えられる疫学調査(福岡県粕屋町・星野村、沖縄県石垣市、長崎県壱岐市)には、医局員全員に参加してもらっています。幅広い知識が必要な疫学的研究は、総合診療を目指す若い医師にとっては刺激を受ける場所でもあり、将来の臨床研究やSubspecialtyを考える上で役立つものと確信しています。
真の総合診療医を目指す方は、是非、九州大学病院総合診療科を訪ねてください。