九州大学病院における
総合診療科の歴史と未来
1)歴史と概要
近年の医療は専門的、細分化される傾向があり、総合的に診療できる医師が要求されるようになり、当院でもこのような機能を持つ診療部の必要性が考えられ、全国的にも早い時期であった1987年に設立された(中村元臣循環器内科教授併任)。1988年に柏木征三郎教授が専任の部長となり、1989年には病棟が開床(12床)された。 1990年には初めて入局者があり、以後毎年3・4名の入局者がいる。1994年にはHIV感染患者のための病床(4床)が用意された。1996年には救急患者用病床(4床:救急部管理)が用意され、救急部との共同運用となった。1999年には大学院構想により当部の教授・助教授は九州大学大学院医学系研究院臓器機能医学専攻内科学講座感染環境医学の併任となった。また2000年に第8回日本総合診療医学会を主催した。  2001年7月林純教授が部長となり、現在助教授1名、助手4名、臨床教育研修センター助教授(併任)1名である。その他に大学院生が所属している。 九州大学総合診療部は、プライマリ・ケアとして病人全体を診ることができる総合診療医の養成の場として位置付け、主として内科系疾患の診療と、一次、二次救急患者の診療を行っている。診療内容の特徴的なものとして、紹介状のないあるいは専門分野が決まってない内科系の新患患者の診療を行っている。専門的医療が必要と判断された場合、専門分野との連携をとり、患者が適切な医療を受けられることを図っている。全身疾患である感染症(HIVを含む)や生活習慣病を中心に診療しているが、院内感染対策(血流感染のサーベイランス職員の針刺し事故感染を含む)についても積極的に行っている。また、林純教授が臨床教育研修センター長であることから、卒後教育にも取り組んでいる。
2)めざすもの
新病院ができ、各科が臓器別診療となる中、九州大学病院における総合診療部の果たす役割は、ますます重要になると思われる。総合診療部においては、多くの患者の中から、速やかに、的確に、主たる疾患を診断し、専門医へ紹介し、患者が満足する医療が受けられるようにしなければならない。したがって、内科系、外科系を問わず、あらゆる診療科および診療部との連携が必要となる。医療経済を考えた診療支援システム(病診連携を含む)の確立には医療情報部や医療システム学講座と、また、これから確実に増加する多疾患を持った高齢者の医療には、老年医学講座との連携をとり、九州大学病院における医療が円滑に行えるよう努力すべきであろう。  現在まで行ってきた感染症の疫学的研究を、さらに分子生物学的、遺伝学的および免疫学的解析を加え発展させるとともに、他の疾患の疫学的研究、 Quality of Life学や医療社会学を行う。臨床的研究としては臨床疫学および決断分析学を行い、臨床的研究を学びながら総合診療医としての実力をつけている。 九州大学病院総合診療部は研究的思考力をもった、臨床に強い総合診療医の育成をめざしている。Common Diseaseから重大な疾患を鑑別することや、EBMなどの実践により、円滑に専門医療と連携がとれるようにする。地域医療への参加を通じて、医療社会学を学び、病診連携を実践できるようにする。